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ソクブン中毒

ここのところ、鈴木則文がとても気になる。


下品こそ、この世の花: 映画・堕落論 (単行本)

下品こそ、この世の花: 映画・堕落論 (単行本)


おおもとは馴染みの映画館で借りた「あかんやつら」という本だった。東映撮影所の興りからいかにして隆盛を誇るまでになったかを多量な当事者たちへのインタビューを織り交ぜ書ききった大作。著者は時代劇研究家の春日太一
この本が当時の東映、というよりは興行界全体の暴走ぶりを、綿密な取材と膨大なフィルモグラフィを基盤にして描き出す。

もう徹頭徹尾夢中で読みふけった。
終戦直後の動乱に揉まれながら映画を嵐のようなスピードで作り上げていく様に驚嘆しながら、或いは「仁義なき闘い」出演を決めた金子信雄の心情に涙したりして。

鈴木則文はこの本の中に数多出てくる監督の一人で、出世作は菅原文太主演の「トラック野郎」シリーズ。
私が見たのは「望郷一番星」だけ。
最近ソクブンが気になるという話を職場のおっさん(木下恵介ファン)にしたら、「もっと見るべきものがあるだろうに」とまさしく余計な世話を焼かれつつしぶしぶ勧められた一作である。

感想は、といえば、画面一杯に、男子たちが躍動する奇妙な映画だった。
途方もなく明るい、影のない画に 下品でまっすぐな男たち。トルコ風呂の女たちや、愛川欽也演じるやもめのジョナサンの妻、松下君江の持つおおらかで暖かいエロス。
ついぞ私が経験しなかった、ゆえに漠然と「昔」でしかなかったある時代の香りを、強く訴えかけてくる。

などと言いながら、まあこれ一本しかまだ見てないわけですが。
この後仁義なき闘いイッキミモードに突入してしまったもんだから…

そんなある日、ふらっと入った本屋で見つけたのが冒頭で掲げた一冊だった。
軽快な語り口で、東映黄金時代の物語や映画界の巨匠たちの思い出話が繰り広げられる、きわめて愉快なエッセイ集。
その行間には無邪気とも言えるほどに熱い、映画への愛が籠められていて、
ああ確かにこの人はあのトラック野郎の監督だなあ。と実感した。
この人こそ、あの下品でまっすぐな男たちの父なのだなあ。

この後「東映ゲリラ戦記」を読了。
この本装丁が超かっこいい。
残すは国書刊行会(!)から出ている「トラック野郎風雲録」です。
まだまだ夢中です。

東映ゲリラ戦記 (単行本)

東映ゲリラ戦記 (単行本)